平成18年度史料展示2「古文書からみる江戸時代」


1 村掟とは何か?

まず、江戸時代に作られた種々の法や掟を紹介します。領主法の例として幕府から出された高札と五人組帳前書、そして前橋藩から出された「白砂弁振」を展示しました。また民衆法の例として、村掟、領主からの命令に反対した掟、古着仲間の掟、若者の掟を挙げました。連名連印(人々が掟を守ることを誓約した署名捺印)の形式の違いにも注目してみてください。

1-1 御法度書御條目 御仕置五人組帳前書 25×17cm 1冊
1 上原清彦家文書(吾妻町大戸) P7901-42 江戸時代
1-2 白砂弁振写 25×15cm 1冊
1 根岸孝一家文書(前橋市西大室町) P8419-18 安政4年 1857
1-3 村を分けることに反対した傘連判状 25×57cm 1状
1 関緑家文書(吾妻町植栗) P7801-166 天保3年 1832
1-4 古着仲間取極 24×84cm 1状
1 関緑家文書(吾妻町植栗) P7801-236 天保9年 1838
1-5 若者たちの掟 25×98cm 1状
1 大胡町茂木第二区有文書 P8301-140 安政7年 1860
1-6 村掟 25×121cm 1状
1 前橋市龍蔵寺町自治会文書 P8303-111 天保13年 1842

2 時代の変遷と村掟

ここでは、当館の収蔵する村掟の中でも、特に時代性を反映したものを集めて展示します。当館収蔵の最も古い元禄11年(1698)の村掟を始め、天明3年(1783)の浅間焼け直後の掟、文政10年(1827)に開始された幕政改革にともなう組合村の掟、幕末維新期の動乱の中で出された掟などを挙げます。自主的に決めたもの、領主からの命令を確認したものがありますが、時代の変化の中で村を維持するために人々が共同していた様子を伝えてくれます。

2-1 吹屋村こさ切蓮判状 27×18cm 1冊
1 阿久澤家文書(子持村吹屋) PF9701-1/31 元禄11年 1698
2-2 賭博禁止の掟 25×17cm 1冊
1 天田壮家文書(高崎市下瀧村) P08105-235 明和7年 1770
2-3 天明の浅間焼け「村定連判帳」 25×57cm 1冊
1 山田松雄家文書(鬼石町譲原) P8217-874 天明3年 1783
2-4 文政の改革「改革組合村々取締り条目並び議定連印請書」 26×18cm 1冊
1 伊能光雄家文書 P8003-555 文政10年 1827
2-5 悪党への対処を定めた「御取締向組合為取替儀定之事」 29×212cm 1状
1 上原清彦家文書 P7901-191 文久3年 1863
2-6 江戸幕府の倒壊「議定連印書付」 30×20cm 1冊
1 小林小五郎家文書(藤岡市中大塚) P8117-190 慶応4年 1868
2-7 明治維新直後の動乱「両給一同議定連印」 25×17cm 1冊
1 小林小五郎家文書(藤岡市中大塚) P8117-73 慶応4年 1868

3 村掟からみる吹屋村の人々~阿久澤順一家文書より~

阿久澤順一家文書に残された村掟から、群馬郡吹屋村(現渋川市)の人々の生活を辿ります。鋳物業を営む一方で、近世後期に吹屋村名主を務めた阿久澤家には、村政に関する文書中に20点の村掟があります。これは当館収蔵の史料中、一カ村に残された掟の数として最多です。農作業、博奕禁止、質素倹約などの内容が中心ですが、中には飼い犬に関する掟や盗人に赤頭巾を被せる制裁など特色のあるものもあります。

3-1 賭博、農作物の盗みを禁止した掟「村中相談相定連判牒」 15×39cm 1冊
1 阿久澤順一家文書(子持村吹屋) PF9701-26/380 寛政2年 1790
3-2 飼い犬についての掟「村中連印帳」 24×15cm 1冊
1 阿久澤順一家文書(子持村吹屋) PF9701-5155 文化10年 1813
3-3 盗みの禁止と制裁規定「村中議定連印帳」 25×17cm 1冊
1 阿久澤順一家文書(子持村吹屋) PF9701-26/388 天保8年 1838
3-4 倹約の掟と宴会料理「村方倹約連印帳」 29×21cm 1冊
1 阿久澤順一家文書(子持村吹屋) PF9701-24/346 安政4年 1857
3-5 盗人の特定と見せしめ刑「村中一同儀定連印帳」 28×21cm 1冊
1 阿久澤順一家文書(子持村吹屋) PF9701-27/406 明治3年 1870

4 村の掟いろいろ

当館の所蔵する上野国各地の村掟の中で、山の口明け、地域の産物、堰の利用、伝馬役、宿場の決まり事など特徴的なものを展示しました。全国で6万を数える江戸時代の村は地理的環境の違いやそれぞれの有する歴史によって個性を持っていました。村掟も村の実情に即して多様な内容が定められています。ここで紹介した掟は、ほんの一部に過ぎませんが、各村とそこで暮らす人々の生活をよく伝えてくれる史料です。

4-1 山の利用と村の秩序「村相談相定之事」 24×196cm 1状
1 新治村須川笠原惣代文書 P9007-34 享和3年 1803
4-2 地域の産物「議定書」 25×17cm 1冊
1 黒沢一郎家文書(藤岡市高山) P8201-22 慶応4年 1868
4-3 街道筋の掟「村掟惣連判証文」 27×17cm 1冊
1 中島徳造家文書(松井田町五料) P8909-372 寛延3年 1750
4-4 用水管理と村々の掟「為取替議定一札之事」 29×66cm 1状
1 前橋市龍蔵寺町自治会文書 P8303-161 嘉永元年 1848
4-5 宿場の人々と掟「議定書」 25×18cm 1冊
1 滝原經男家文書 P09607-96 文久2年 1862

5 違反者に対する制裁

ここでは、「組外し」の事例、博奕現場を差し押さえられた事件、幕府の禁令を破ってしまった事件、山の口明けに関わる仕来り破りの件などを展示しました。展示史料中に罰金や体罰などの制裁が数多く登場しましたが、実際に掟を破った場合の対応について、これらの史料はたいへん良く伝えています。村の秩序を維持するため、掟破りには厳しい制裁がありましたが、当事者が詫びを入れ謹慎すれば許されることもありました。

5-1 五人組からの組外し「村中口上書」 26×70cm 1状
1 神戸金貴家文書(下仁田町本宿) P8213-3346 元禄9年 1696
5-2 賭博現場を押さえられた顛末「差出申詫議定一札之事」 29×98cm 1状
1 小此木千代子家文書(藤岡市下日野) P8206-2152 嘉永7年 1854
5-3 農業怠りの罪「乍恐以書付御慈悲奉願上候」 30×70cm 1状
1 飯塚馨家文書(鬼石町三波川) P8214-7745 弘化2年 1845
5-4 大酒飲みへの罰「乍恐以書付御慈悲奉願上候」 30×121cm 1状
1 飯塚馨家文書(鬼石町三波川) P8214-7759 弘化2年 1845
5-5 仕来り破りと人々の対応「儀定連印之事」 25×31cm 1状
1 市村一夫家文書 P9002-254 天保14年 1843

6 その後の村掟

江戸時代が終わり新政府は、近代国家の建設にあたって司法制度の改革に取り組みました。その過程で、 従来の法や掟も新しい時代にあったものへと改められました。しかし、村掟は完全になくなってしまった わけではありません。
 明治16年(1883)に定められた取り決めでは、租税の延滞や臨時集会の無断欠席、山林荒しを禁止して、破った時の罰則が取り決められています。このように、村掟は近代以降も形を変えて残り続けました。
 そして、それらの多くは人々の生活に深く関わるものであり、現代の我々にも多くの示唆を与えてくれるのです。